美と健康は歯で創られる~令和編~ ⑦

第6回 美しいスマイル(歯)はビッグピクチャーで その2

 審美歯科では、笑った時の歯の見え方も理想的なスマイルデザインを創るときに考慮されま す。口唇をリラックスしている状態、もしくは 微笑んだ時に上顎中切歯の先端が上唇の下縁から少し見えるのが理想とされます。

 笑った時に見える上の前歯から小臼歯にかけ ての下縁のアーチが下にほんの少し凸のカーブ を描くと女性的なスマイルになります。美人女優やモデルさんたちはこの凸のカーブが強めの 方が多くみられます。一方、このラインが水平であったり、逆に、上に凸のカーブですと(リバーススマイルライン)、男性的な感じになります。昔、漫画家の松本零士さんの作品で『男おいどん』というのがありましたが、主人公のおいどんの歯が正にそれです!

 歯を見せて笑ったときに、上顎前歯部の切縁が描く下に凸のカーブに下唇の上縁が同じよう な弧を描いて沿うと美しく素敵なスマイルに見 えます。「自分は違う」とあきらめるのは早いですよ。鏡を見て練習してみてください。口角をしっかり挙げて笑うと、この形に近づくことができるはずです。加齢によって、上唇も口角も下がり気味になり、上の前歯が見えにくくなりがちですが、むずかしい場合は、上下の歯を少し開いて笑ってみてください。上の前歯がきれいに見えるように簡単にスマイルするコツです。私は患者さんによくこの方法をお勧めしております。

 もう一つ、審美歯科における数値的なゴールデンプロポーションのポイントを追加しておきましょう。

ポイント3 上顎前歯の幅の比率:

 真正面から見たときに、上顎側切歯の幅を1とすると、中切歯の幅は1.6、犬歯の幅は0.6に見えるプロポーションが理想とされます(真正面から見た時の見え方の比であり、実際の歯の幅の比とは異なります)。

 ファッション誌などで欧米のモデルさんの顔を見ていますと、天然か、術後かを問わず、上顎中切歯がかなり目立つ感じ(ビーバーのように)が最近のトレンドのように感じます。

 いわゆるハリウッドスマイルはこうしたゴールデンプロポーションに近いのですが、そうでなくとも人それぞれの個性を重んじるという考え方もあります。健康な天然歯の輝きに勝るも のはないのですから。

 ビッグピクチャーということで、マクロ的なスマイル(歯)の見方のお話をしましたが、マクロを支えるのはミクロの技です。健康な歯質を極力保存しつつ、充填物や修復物の精度を上げ、微妙なテクスチャーを付与し、天然歯に限りなく近づけるためには、ミクロの配慮が欠かせませ ん。審美歯科に限らず、通常の一般歯科でも拡大鏡を使用した治療は普及してきており、筆者にとっても日常、欠かせない大切な器材となっ ています。

  <withコロナ時代では拡大鏡に加え、フェイスシールドも日常的に装着>

<参考>
Dr. Ronald Goldstein, et al.“Change Your Smile”, 4th edition, Quintessence Pub Co、他

*本稿は一般社団法人日本内部監査協会の「月刊 監査研究」2014年4月〜2015年3月号に連載された、ひとみデンタルクリニックの歯科医師、権藤ひとみ著、「美と健康は歯で創られる」を編集、加筆したものです。©Hitomi Gondo