美と健康は歯で創られる~令和編~ ⑥
第5回 美しいスマイル(歯)はビッグピクチャーで その1
日本人はどうも大局でものを見るのが苦手なのかなと感じるときがあります。例えば、洋服選びでも柄やパーツのごく一部を気にされていて、自分の着こなしが他人にどのように映っているかの全身的な見栄えのチェックをする習慣をお持ちでない方は意外に多いものです。ボストンの人気ワードローブコンサルタントのメアリー・ルー・アンドレさんは第一にすべきこととして、「全身鏡を買いましょう」というファッションアドバイスをされています(注)。
歯についてもしかり。一本一本の歯がむし歯フリー、歯周病フリーであることは大切ですが、色や形、3次元的バランス、噛み合わせなどの全体の調和がとれて初めてお口の中で正しく機能し、美しいスマイルに見えるのす。「正しいものは美しい」、「美しいものは正しい」、は正論です。
これからご紹介する症例写真は、同じ患者さんの術前と術後です。実は、歯の見栄えにも様々なゴールデンプロポーションやゴールデンルールが存在します。これまでの一般歯科では、もとの歯の形の復元が基本でした。審美歯科ではゴールデンプロポーションを考慮してスマイルデザインの目標を定め、それに合わせて歯の色や形態を整えるということも行います。どうせ、むし歯の治療や銀歯のやりかえをするなら、きれいに治しましょう、ということなのです。その際も、前歯部なら、昔のようにクラウンをかぶせたりする治療は歯を削る量が多いので極力避け、セラミックのラミネートべニアのように接着技術を活かし、調和した色や素材感、ボリュームや長さを出す「足し算の治療」を優先します。
それでは、審美歯科におけるゴールデンプロポーションについて、ごく一部ですがポイントをご紹介いたしましょう。
ポイント1 ミッドライン:
瞳と瞳を結んだ線に上顎の中央の前歯(上顎中切歯)二本の間を通る線(ミッドライン)が垂直に交わること。顔の正中がこれに一致しない場合もありますが、垂直に交わるという原則を優先します。また、瞳と瞳を結んだ線と左右犬歯の先端と左右中切歯の先端を結んだ線が平行になります。術前では特に、中央の前歯二本の軸が傾いていました。
ポイント2 上顎中切歯の幅と長さ:
上顎中切歯の歯冠の長さを10とすると、幅は8がゴールデンプロポーションです。前歯のなかでも中切歯は一番目を惹きますね。あなたの中切歯はいかがでしょうか? Check it out!
(次号に続く)
(注)メアリー・ルー・アンドレ著、権藤ひとみ訳『私を美しく変えるワードローブ整理術』ダイヤモンド社、48頁
*本稿は一般社団法人日本内部監査協会の「月刊 監査研究」2014年4月〜2015年3月号に連載された、ひとみデンタルクリニックの歯科医師、権藤ひとみ著、「美と健康は歯で創られる」を編集、加筆したものです。©Hitomi Gondo